リーダーシップとは何でしょうか。リーダーに求められる能力? 資質? 必要なスキルセット? 半分は合っていますが、半分は間違っています。リーダーシップはトレーニングによって鍛えることができる能力であり、スキルセットです。伸ばそうと思えば伸ばすことができるという意味で、生得的な資質とは違います。その気になれば、誰でもリーダーシップを身につけることができます。
もっと大きな間違いは、リーダーシップを発揮するのはリーダー【傍点】だという暗黙の前提です。部長、課長、マネジャー、プロジェクトリーダー、チームリーダーなど、世の中にはさまざまな「長」や「リーダー」がいますが、その人たちが全員リーダーシップを発揮しているわけでもなければ、「長」や「リーダー」以外の人たちのなかでリーダーシップを発揮している人もたくさんいます。リーダーシップは、組織のトップやチームリーダーに固有の能力ではなく、メンバー全員が持つべき能力です。それぞれの立場でリーダーシップを発揮することで、機動的で柔軟な組織になります。 リーダーシップは、肩書きや立場とセットではありません。自分は新入社員だから、メンバーの中でいちばん下っ端だから、自分には部下がいないからリーダーシップは関係ないという人にこそ、本書を読んでほしいと思います。 リーダーシップは、持って生まれた性格でもなければ、その人を特徴づける個性でもなく、選択の問題です。発揮するか発揮しないか、取るか取らないかは、その人自身が決めることです。 リーダーシップを別の言葉に置き換えると「影響力の行使」です。たとえば、会議中に誰かの発言によって議論の流れが変わり、建設的な意見が出るようになったら、その発言をした人はリーダーシップを発揮したといえます。 会議を仕切るのは進行役のファシリテーターとは限りません。議論がうまくまとまらないときに、「ちょっと違った角度から見てみましょうか」「このミーティングの目的は○○ですよね」と言葉を挟んで、議論を正しい方向に導くのも、立派なリーダーシップです。会議に参加しているメンバーなら、誰でもリーダーシップを発揮するチャンスがあります。 自分が何気なく取っているはずの行動も、その場にいる人たちには必ず何らかの影響を与えています。自分の行動の結果、どんな影響が出るかをあらかじめ予測して、その行動を取るべきか取らざるべきかを選択して行使するのがリーダーシップです。 とはいえ、リーダーシップは周囲に影響を与えて現状を変えようとする行動なので、場合によっては、周囲の人たちに快く思われない可能性があります。リーダーシップをとることと、リスクをとることは表裏一体の関係なのです。 たとえば、下っ端の自分が上司に対して「こうしたほうがいい」と主張することで、もしかしたら上司に嫌われてしまうかもしれない。それでもし失敗したら、評価だって下がるかもしれない。 しかし、リスクを恐れているだけでは、現状は何も変わりません。よくない部分を指摘して、建設的な変化に踏み出すことは、リーダーシップの大事なポイントの一つです。 その意味で、上司に言われた通りにやるだけでは、リーダーシップを取ったことにはなりません。そこに自分なりの何かを加える、自分の意思でそこに何かをプラスするのが、部下の立場で取り得るリーダーシップです。 上司の側も、前例がこうだからその通りにやるというだけでは、リーダーシップをとったことになりません。現状にプラスアルファの変化をもたらすのがリーダーシップの基本です。リーダーシップは空気を読んで、空気を壊すという一連のアクションでもあります。その場の空気を読むだけの人もいれば、空気を読まずにただ壊すだけの人もいますが、どちらか一方しかできないと、思ったような効果は得られにくいものです。空気を読んだうえで、必要に応じてその空気を上手に壊すことで、よりよい変化を周囲に与えることができます。僕がこのような考えを持ったのは、いまから一〇年以上前に、上司に言われたひと言がきっかけです。年末評価の話し合いで、日本人の上司は僕にこう言いま |
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